映画のラストシーンはずっと映画の中だけだと思っていた。

出会って4年、ずっとずっと仲の良い友人だった。

気兼ねのない会話をして、気兼ねのない食事に行く、気兼ねのないお酒を飲んでいるような友人だった。相性がよかった。

 

前の彼氏と別れた直後、好きなんだ、と言われた。

私も、好きだったけれどそれは彼と同じ好きではなかった。気兼ねのないこの関係を崩したくはなかった。付き合えない、と伝えた。付き合ったらいつか別れが来るでしょ?と。

 

別れたばかりで、恋愛はもうしばらくしなくていいかな、なんて思っていたし、何よりも、私のことを1番理解している最高に相性のいい彼と付き合って、いつか別れが来るのが怖かった。別れてしまったら、もう一緒にはいられないもの。何をしなくても心地いい、この関係は消えてしまうのだもの。

 

その後も、彼とはほぼ毎日のように会って、お酒を飲んだり、ご飯を作ったり、コーヒーを飲んだり。代わり映えなかった。彼は相変わらずだったけれど、よく、好きだと伝えてくるようになった、ハグをしたりキスをするようになった。セックスも気づいたらしていた。やっちゃったなあ、なんて思いながらも、体の相性までもビックリするほどに良くて、2人で笑ったっけ。

 

年が明けて、思いつきで、弾丸旅行に行った。車内でもずっと好きな音楽を流して、好きなYoutubeを見て、ラジオを聴いて、何も変わらなかった。好きなのかもしれない、そう思った。

 

その日は、大雪で高速道路はかなりの悪路。ど真ん中でスリップし、中央分離帯に衝突。死んだ、と思った。幸い、スピードも出ておらず、前後に車もいなくて最悪の事態にはならなかった。スリップした瞬間、ちゃんと好きって伝えておけば良かったなあって結構悠長なこと考えてたっけ。

 

なんとか部屋に戻って、2人で抱き合った。生きてて良かったねって半泣きで笑いあった。きっともう人生で、こんな体験をすることもないだろうね、ってだんだん可笑しくなってきちゃってしばらく笑いが止まらなかった。

その日の夜、彼からやっぱり付き合ってほしい、と言われた。事故って死にそうになって告白する、なんて映画のラストシーンかよ、とも思ったけれど、私も同じ気持ちだった。付き合ってから起こり得る衝突も葛藤も、いつか訪れるかもしれない別れも、結婚を考えられない私の価値観も、彼となら気にならないかもしれない、というより考える必要もないかもしれない、そう思った。

 

昨日、そんな彼と友人から恋人になりました。